− OS FSα−72 インプレッション −

<OSα(アルファ)シリーズがさらに充実>

この度、OSからFSα-81に続く待望の50〜70クラス4サイクルエンジンのFSα-72が
リリースされました。すでにFSα-56・FSα-110と前出のFSα-81の3機種が市場に
投入されていますのでαシリーズはこれで4機種が揃ったことになります。
いずれのエンジンも豊富に市販されている機体にベストマッチなエンジンで、ちょうど中間のサイ
ズに当たる新発売のFSα-72は搭載するエンジンを選ぶにあたって、更に選択肢を広げてくれる
存在となりました。

<FSα-72の特徴>

このαシリーズに共通するのはとてもキレイに仕上げられた艶消しブルーアルマイトのタペットカ
バーで、αの称号もそこに誇らしげに見てとれます。外観の説明が続きますが、これまでのOSで
発売させれていたエンジンと大きく違う点は、アルミダイキャストで作られたマフラーにもありま
す。大幅に引き上げられたマフラー内部の容積は、これまで以上に環境に優しい消音効果と排気効
率の大幅アップを図るものです。そして私が最も注目した点はキャブレターのエアファンネルにあ
りました。機能美にあふれるエンジン外観はどちらかというと現代的なイケメンの男性的魅力があ
りますが、それに対してこのエアファンネルはなんとセクシーな曲線美をしているのでしょうか。
これ以上無い性能を獲得している工業製品は誰が見ても美しく見えるもので、F1カーのデザイン
がよい例ですが、このような理想的なエアファンネル形状は簡単には作れるものではありません。
RCエンジンではこれまでに積極採用したことがなかったこのパーツの働きを簡単に説明しますと、
吸入する空気の整流効果と吸入音の静音化にあります。大気から空気を取り込む際に、入り口付近
の急激な気圧変化が抵抗となりますので、吸入口にゆるやかな曲線と延長線を持たせることにより
スムーズな空気の導入を可能にさせていることと、空気の流れがスムーズになることにより相対的
な負圧が緩和されて静音化が可能となる訳です。皆さんもためしに掃除機の先端を外して、パイプ
部分に手をファンネル状にしてあてがってみると、その形によって一番静かになる形状があること
に気付かされると思いますのでお試し下さい。そしてそのときの流速が一番効率がよいので、吸入
効率が最大となっている状態なのです。また、効率の悪い吸入音は以外にうるさいもので、時には
マフラーからの排気音を上回ることさえあるものなのです。
次にαシリーズから採用されたクランクケースからの残留オイル排出ニップルですが、飛行機マニ
アには実にうれしい処理方法です。これは一見すると残留オイルをどこへも排出していないようで
すが、ピストンとシリンダのわずかな隙間からクランクケース内に降りた残留オイルはクランク室
の一次圧縮によりプッシュロッドパイプ内を通してシリンダヘッドに押し上げられ、インテークバ
ルブのタペット付近に設けられた小さなオリフィス(穴)から吸入負圧で再度燃焼室に引き込まれ
て再燃焼させるシステムとなっております。実車の自動車では燃料自体にオイルは混合されません
から問題にはなりませんが、RCエンジンより完全燃焼に近い実車の場合は強酸性のブローバイガ
スとして排出され、大気中にそのまま放出させることは法律で禁じられておりますので、キャブレ
ターに戻して再燃焼させています。RCエンジンの場合は燃焼温度が実車よりも低いので強酸性に
はなりませんが、実車と違ってオイルだけがどんどん溜まってしまいますので、これまでは単純に
クランクケースにニップルを設けてそこから排出させていました。ダラダラとたれるオイルは機体
を汚し、飛行後の掃除は誰にとってもいやなものでしたが、αシリーズに採用されたこのシステム
は確実にマフラーからのオイルのみとなるので、機体のカバーフイルムや塗装の傷みが格段に少な
くなるに違いありません。これにどのメーカーもなし得なかったキャブレターからの吹き返しが処
理できるようになれば画期的なRCエンジンになりますが、前出のエアファンネルが装着されたこ
とによって、その量はかなり少なくなるとOSさんから説明されていますのでテストが楽しみです。
さて、ほかにもαシリーズに共通する特徴がありますが、それはこれまでにない軽量エンジンであ
ることです。これを達成させているのは基本設計がショートストローク・オーバースクエア化にあ
ります。FSα−72のボア(内径)が27.0mm、ストローク(行程)が20.6mmとストロークを
ボアに対して大きくとることにより、エンジン全体の高さを低く抑えてエンジン全体の大きさをコ
ンパクトにしたことで軽量化が可能となったのです。そしてオーバースクエア化で燃焼室内の内径
が拡大したことでバルブ面積を大きくとることが可能となり、より高性能化を達成できるようにな
ったようです。傑作エンジンであったFS-70アルティメイトの後継機として登場したこのFSα
-72には見ているだけでも期待感が大きくなり早速機体に搭載することとします。

<搭載機体を決定する>

エンジンテストをする機体選定に入りますが、手元にブラックフォースモデルのCAP232-50
70クラスがありましたので、搭載してあったSAITO FA-56GKを降ろして積み替えます。
エンジェルスジャパンから発売されているこの機体は市販されているCAP系ではかなり飛ばしやす
いモデルで、急激なエレベータ操作により起こしやすい主翼の高速失速もかなり穏やかな特性で、そ
れでいて失速系の演技も普通にこなす私のお気に入りな機体です。
エンジンマウント幅はほとんど同じでしたが、マウントビス穴はかなり違っていましたので新たに
開け直しました。エンコンロッドもFSα−72は10mmほど外側でしたので同様に開け直しです。
エンジンカウルではマフラー部を若干拡大、シリンダヘッドの露出部分はまったく直さず、ニードル
露出穴は楕円に加工、たくさん書いたようですがほとんど苦労せずに換装できたほうです。燃料チュ
ーブやプレッシャーチューブはそのまま簡単に接続するだけでした。
プロペラはAPC12X8を取り付けましたが、飛行の際は13X7、13X8と何種類かのデータ
を取りたいと思います。なお、プロペラシャフトにはゆるみ防止のロックナット付きが採用されてい
ますので安心して使用することができます。FA-56GKからFSα−72に換装しての機体総重量
は70g増の2750gとなり、かなりのパワーアップにもかかわらず、ほんのわずかで済みました。


<フライトテスト>

このところ強風日が多く暖冬のせいか例年に比べ気温の高い日が続いていますが、テスト日も相変わ
らずの強風日、飛行場の吹流しは完全に真横に向いています。こんな日は殆どのフライヤーは飛行を
あきらめますが、原稿締め切りまで時間がありませんので強行することにします。
まずエンジンのブレークイン(慣らし運転)から始めます。
燃料はクロッツのLS−2000 ニトロ20%を使用しました。タンクを満タンにしてニードルを
閉め込んだところから3回転ほど戻してプラグヒートさせずエンコン全開でスターターを当てます。
新しいエンジンに燃料が呼び込まれたのを確認してエンコンを一旦全閉位置に戻し、そこから1/4
ほどエンコンを上げてプラグヒートさせます。するとスターターを回した瞬間からエンジンは始動を
しはじめ、ビックリするほどの始動性を見せました。さすがにOSエンジンで、いつでも簡単に始動
するこれまでの伝統は変わりません。エンコンを半分まで上げてプラグヒートを外しても止まらない
ことを確認してからエンコンを全開にして、そこから更にニードルを1回半ほど開けての慣らし運転
をタンク1本分行いました。これはエンジン内部の保護オイルや油脂分などを洗い流す意味で私が昔
から実行していることです。次のタンクではニードルを徐々に閉めて高速回転を10秒、ニードルを
開けて低速回転10秒と交互に繰り返しながら、ある程度の熱を掛けながら初期のアタリ取りのため
の慣らしをしました。次のタンクはいよいよ飛行させながらの慣らし運転になりますが、取り付けた
APC12X8ですでに1万回転を軽々とオーバーしていますので、ニードルを2回転強戻しのかな
り濃い目で飛行させることにします。
相変わらずの強風をついて向かい風の中をテイクオフ、エンコンはハーフで地面を離れ、あっという
間にCAP232を上空に持ち上げてしまうパワーを体感しました。数回のパス後に垂直上昇を試み
ると、これまでにこのCAPでは経験したことのないスピードであっという間に見えなくなるぐらい
の高度を獲得しています。もうこの時点で単なるじゃじゃ馬的なハイパワーではなく、低速回転から
高速回転まで実に扱いやすい操作性が感じられました。これには「音」が大きく関係しているのでは
ないかと思います。穏やかな排気音だと圧迫感が少ないのでそう錯覚するのだと思います。それと音
質がとてもマイルドなのは新採用のマフラーにあるのでしょう。
その後、プロペラを13X7、13X8(いずれもAPC)と交換してのテストの結果、私のベスト
と感じたのはこのCAP232の場合13x7でした。このときのニードルは1と3/4回転です。
それにしてもなんというパワーでしょう。このCAPには明らかにオーバーパワーなのですが、扱い
やすいので違和感はまったくありません。あとで静止推力を計測したらなんと3.5sもあったこと
を付け加えておきます。
テストを通しての感想ですが、明らかに前モデルのFS70アルティメイトをしのぐパワーを発揮し
ながら、ツンツンしたパワー感はまったくしない扱いやすいエンジンに仕上がっており、これはトル
クカーブがフラットになっていることがこの特性に寄与しているものと思われます。
レーシングカーでも本当に良くできたエンジンは誰が使っても扱いやすい特性になるもので、同じよ
うなトルク特性をしています。
ですからこのエンジンはスケール機では中速域を優雅に、スタント機では微妙なスロットルコントロ
ールがより楽になり、パイロン機では全開でカッ飛ぶなどとあらゆるシーンが想像できる欲張りなエ
ンジンであるといえるのではないかと思います。


                                      廣瀬 清一


エンジン諸元

行程体積 : 11.79t
ボ  ア : 27.0o
ストローク: 20.6o
実用回転数:  2,400〜12,500rpm
出  力 :  1.2ps/11,000rpm
重  量 : 476g(マフラー除く)マフラー単体 54g



静止推力 : APC12X8  3.2kg/10,400rpm
(実測値)   APC13X7  3.5kg/10,100rpm
       APC13X8  3.3kg/ 9,500rpm