― SHエンジン使用レポート ―   東條 良二
 <SHエンジンとは?>

SHエンジンとは聞き慣れないエンジンメーカーですが、台湾に本社を置くゴールデン
ライオン エンタープライズ(株)というレーシングカーやバギーのエンジンを中心に
製造しているメーカーです。
カー用のラインナップは大変多く、一部飛行機用やヘリ用のエンジンを製作していて、
日本ではラジコン界でも皆さんの良く知られている小池庫司氏が代表を務めるアストロ
ホビー・ジャパンで輸入・販売をしている。
ヘリ用エンジンの37クラスはこれまで永くこのクラスを牽引してきた32クラスから
更なるパワーを付けて登場してきた排気量だが、OSから昨年に発売となった37SZ
−HやサンダータイガーのPRO−36HやPRO−39Hがこのクラスの代表エンジ
ンといえる。
さて、今回テストするSHエンジンは『PT37HS』というヘリ用エンジンである。
外観はシリンダヘッドがブルーアルマイト加工を施してあるとてもキレイなエンジンで、
クランクケースはレーシングカーエンジンからフィードバックされた強化リブが入った
とてもしっかりしたクランクケースが特徴である。
ピストンは上死点で嵌め合いがきつくなるリングレスのABCタイプとなっているが、
よく耳にするABCとはアルミピストン・ブロンズ(真鋳)スリーブ・クロームメッキ
の略称であり高性能エンジンの代名詞としてよく採用される。
エンジンマウント寸法やクランクシャフト長はこのクラス共通のジオメトリーとなって
おり、簡単にボルトオンで換装することが出来る。
息の長い30クラスではあるが、どのヘリメーカーでも熟成の域に達している30機は
初級者のヘリ入門には最適だし、いずれ機体を選んでも失敗はないだろう。
こうなれば最初からパワーに余裕のある37クラスを選んでみてはどうだろうか?
ピッチカーブやスロットルカーブ調整もパワーに余裕があると格段に易しくなることは
ヘリ経験者は誰でも分かっていることなのだから。


 <早速テストしてみる>

今回搭載する機体はTAYAエンジニアリングのアミーゴ30に決定した。
丁度タイミング良くOS32SHがパワーダウンしてきており、オーバーホール時期と
なっていたので比較することは出来ないが、どのようなエンジンなのか楽しみである。
マフラーは他社40クラスを使用した。
エンジンの換装は至って簡単でわずかな時間で完了、次の日は日曜日なので早速クラブ
の飛行場に持ち込んでテストすることにする。
まずはエンジンの慣らし運転から始める。燃料はクロッツのヘリ用23%ニトロを使用
し、ニードルに関しての説明書が無かったので全閉に閉め込んでから3回転戻した所か
らスタートした。
ヘリを押さえてスターターを回すと呆気なく一発で回転を始めるではないか。
まだこの段階でこの新エンジンのニードルがが甘いのか辛いのか判らないのだが、既に
この時点でスローは非常に安定しており、プラグヒートを外しても滑らかに回転を維持
している。このスタートの良さと滑らかさは特筆モノである。
しかし、徐々にスロットルを上げて行っても浮上できない「濃さ」であり、ニードルを
締めて全閉から2回転開けたところでやっとヘリが浮上するようになった。
まだまだ「甘め」で排気煙をたくさん出しているが、この状態で1タンク慣らしを行っ
た。徐々に二ードルを締めながら全閉から1.5回転、合計3タンク穏やかに飛行させ
ながら慣らし運転を行い、排気口からも黒いオイルが出なくなった頃、エンジンのレス
ポンスが鋭くなってきたので1.2回転位いまで絞って上空を走らせて見た。
直線飛行での伸びが明らかに良くなり、ループも今までより大きく描くことが出来て大
満足である。ここまでで感じたことはトルクが厚くなった事、フルハイでもピッチ負け
が無くなったこと、それでいてツンツンしたエンジンではないこと、不用意に止まりそ
うもないことである。出来の良いエンジンである。
そして一番感じたのは最初の1タンク目から最後まで不整爆発を感じなかったことであ
る。これは大事なことで、甘めの時にこの不整爆発があるとジャイロに影響してピク付
くしあまり気分が良いものではない。何気ないことのようだがこんなエンジンは初めて
だった。後で考えてわかったことだが、これはキャブの口径に理由があるようだ。
一般のこのクラスからするとキャブの口径が7.9mmとやや小さく、低・中回転でこの効
果が出ているものと思われる。ここだけ見ると高回転でパワーが出なさそうに見えるが、
だいぶ前にOSからハンノ・プレトナ仕様の61エンジンが発売となった時、ノーマル
エンジンよりも口径の小さなキャブが備わっていたことを思い出した。そのエンジンは
ノーマルよりも扱い易く、しかもハイパワーだったことを。
「止まりそうもない」のは低回転での安定が非常に良いことに起因している。スローに
はあまり気を使わなくても良いし、何度もエンジンを掛けたが、スローで止まってしま
うことは一度も無かった。
ゴールデン ライオン エンタープライズ社がカー用エンジンから得たノウハウは相当
なものがあると感じたテストだった。


  発売元  アストロホビー ジャパン
  販売価格 ¥13,650(税込み) 


             常陸 スカイエンジェル クラブ    東條 良二