OS FL−70インプレッション

  −すべてが新設計のエンジン−

OSからこの8月に発売されるニューエンジンが編集部に届きました。先月の静岡ホビーショーで発表された
FL−70は同社の2サイクルエンジンラインナップで言う「LA」のコンセプトで開発され、4サイクルエ
ンジン初心者やサンデーフライヤーを始め中級者レベルの方にも充分納得のいく性能を身に付けているとの事
です。しかも新設計にも拘らず価格も安く、従来のFS−70SUより重量は20%も軽くなっていて、50
クラスとほぼ同じ重量というのがうれしくなって来ます。
「軽さ」というのはそのものが性能であって、このエンジンを積むことによって機体トータルで軽量化が出来
れば、格段に性能アップが保障されたことになります。
FL−70を手に取ってみるとFS−70 アルティメイト(以下FS−70U)からの流用部品は見当たら
ず、全くの新設計エンジンであることが分かりました。内部の部品には一部あるかも知れないが、そんな事ま
で調べる気はありません。しかしボア×ストロークは 27.7 × 19.0mm と同一です。完全なオーバースクエア
なエンジンであることが分かります。その結果エンジン全高を低く抑える事が出来て軽量化を果たしているの
だといえます。
これまでの同社の4サイクルエンジンと比較して初めて採用された部分を挙げてみました。

 @4サイクルでは初めてピストンリングを廃し、2サイクルエンジンのLAシリーズや高性能なSXと同様
  に上死点付近で嵌め合いがきついタイプとしている。

 Aプロペラバックプレートのロックはこれまでの半月キーやホゾ入りタイプから貫通ピンタイプに変更され
  確実なロックを可能としている。

 Bエンジンバックプレートが同社4サイクルでは初の樹脂製となっている。

 Cクランク室ブローバイガスを積極的に排出させるため、マフラーに小径のニップルを追加している。これ
  はべアリングにとって致命的なサビから守るために大変有効な処理である。

 Dマフラー排出口は段付き処理を施し、排気方向を変えるシリコンパイプが抜けない構造としている。

このほかにも前作FS−70Uに採用しているラバーシール付クランクシャフトフロントベアリングは高価な
のだが、FL−70にもあえて使用している。これはエンジンフロント部分からオイル漏れを防ぐ為の良心的
な配慮であると思います。

  −まるでアイデアの固まりだ−

以上の採用されている部分で特筆すべきところはCであり、コペルニクス的発想の転換であると思います。
従来、このブローバイガスの処理は機体外にシリコンチューブを出して垂れ流しにするか、マフラー排気口の
直後にアルミパイプ等で排圧を利用して吹き飛ばすなどの処理を皆さんもされていたかと思いますが、私もこ
れまでに様々な方法で処理していました。しかしマフラー排圧が掛かる箇所には考えが及ばなかったのは、ブ
ローバイガスが排出されるだけでなくピストンが上昇するときには新気を吸い込む作用もあって、ここに排圧
が逆流してしまう懸念があったからです。
パスカルの原理は確か小学生のときに勉強したと記憶していますが、「圧力は均等に掛かる」にとらわれ過ぎ
ていた事を思い知らされました。
OSのこの新作マフラーはタンクプレッシャー用としてこれまで見慣れた内径の大きいニップルが付いていて、
その隣に形状は一緒だが内径がわずか0.5mmほどのニップルが追加されています。これを見た瞬間に「そうだっ
たのか!」とすべてが理解できました。要するにマフラー内部から受ける圧力を出来るだけ少なくし、ブロー
バイ側の圧力をほんの少し上げてやるだけで良かったのです。当然、クランク室バックプレートに設けられた
排出口はこれまでよりも内径は大きくしてあったのです。(OSさん、さすがに優秀です!!)
大事な機体を油まみれにしたくないと思うのは私だけではないと思いますが、Dを含めFL−70はこれまで
以上に排油対策が施されていてうれしい限りです。購入された皆さんはくれぐれも配管を逆にしないようにご
注意ください。このニップルはINとOUTの役割がそれぞれにあるのですから。
それともうひとつは新発想のタンクプレッシャーシステムです。
タンクの配管はエンジンを好調に保つたために重要な部分ですが、これも私には考え付きませんでした。
通常、プレッシャー用の配管は機体を正面状態でタンク内の最上部に位置するようにアルミパイプを曲げて取
り付ける事が常識でした。この場合、背面状態になれば当然このパイプは最下部になります。
マフラーからの排圧は正確なものではないので、背面状態の燃料に浸かった状態のプレッシャー口はその抵抗
で若干ながら圧力は少なくなってしまいます。なにしろ排気口のほうがはるかに大きいのですからそんな事は
そっちのけで排出してしまうのです。
スロットル全開時はそんなに影響しませんが、今日的なファンフライ機やスロー演技時のスタント機などは正
面・背面ともに同じような条件でスロットル操作を要求されます。そんなときに予期せぬエンスト!誰でも経
験があると思います。正面状態でニードルのピークをとっているのですから当然の結果です。
そこでOSは「だったら上下にプレッシャー配管すればいいじゃないか!」そうだったのです。なんで今まで
気が付かなかったのだろう?いや、もしかしたらすでにやっている方もいたかもしれないが・・・・。
OSではこの方式にパテントを取りました。だから他のメーカーでは使えませんが、個人的にマネすることは
多分、叱られないのではないかと思います。

  −機体に搭載する−

いろいろ特徴を挙げましたが、私が一番気に入ったところはその全体的なフォルムです。丸みを帯びたシリン
ダ廻り、均等に配されたフィン、ネオクラッシックと称しているヘッド廻りも含め、これまでのOSエンジン
のなかでお世辞抜きで一番ウットリしました。表現に窮しますがひとことで言えば「美しい!」です。
とにかく早く回して見たい衝動に駆られ、前回FS70−Uのインプレッションに搭載した京商のマジェステ
ィック1400に積んで見ることにしました。ポンプエンジンであるFS70−Uとは明らかにパワーの差は
あるであろうが、絶対パワーの差ではなく、飛ばす前からFL−70のそのトルクフルな特性が想像できたの
でプロペラのマッチングも含め、あえて試して見たくなったのです。
マジェスティック1400は基本的に50クラスですが、前出のFS70−Uを積んでもそのパワーを余すこ
となく前進力に変換できる機体剛性を持ったとても良い機体です。
マウントジオメトリーはFS70−Uと同一なので搭載は簡単です。プロペラはAPC12×7をセットして
おきます。そのほか慣らし運転終了後に11×8、11×9、12×7、12.5×6を準備し、テストをす
る予定ですが高回転パワーを求めるより中速域をトルクフルに回せるプロペラを見つけるつもりです。
プロペラをセットするときに気が付いたのですが、ナットサイズが13mmとなっていて別の工具箱から13mm
スパナを調達しました。このサイズはOSエンジンでは初めてのことではないかと思います。
くれぐれも14mmスパナで締め付けないように忠告しておきます。14mmでは充分に締め付けが出来ないばか
りか、無理に締め付けるとナットの肩をナメてしまうことになります。
プロペラ取り付け後、手でクランクしてみると上死点付近でキツくなることが分かります。リングレスのピス
トンの特徴とはいえ、4サイクルエンジンでは初めての経験なので変な気持ちです。
明日は飛行場に持ち込み、いよいよテストをしてみることにします。

  −フライトさせて分かったこと−

このところ数日は好天が続いていたのに天気予報では午後から雨になるというので、朝食もそこそこにクラブ
の飛行場へ急ぎました。こんな日でも相変わらずクラブ員は大勢が集まっており、持ち込んだFL−70に質
問が飛び交います。
「へ〜、リングレスなんだ〜」「大丈夫かい?慣らしは多めにしたほうがイイナ〜」「カッコいいな」などと
全員が評論家になっています。
コスモ ブラックスペシャル15%ニトロを燃料タンクに入れ、慣らし運転を始めます。スターターを使用す
る前にスロットルを全開にし、マフラー口を指で塞いで手でクランクすることによって燃料を呼び込みます。
少量の燃料が入ることによってピストンとシリンダにキズを付けないようにするためです。
再びスロットルをアイドリング位置に戻してスターターで始動させました。この時のニードル位置は全閉から
約3回転戻した状態です。わずか2〜3回転ほどでFL−70エンジンは濃い目の排気煙を出しながら回転を
始めました。始動性の良さは相変わらずOS製エンジンの特徴ですが、やはりこれはリングレス、若干重そう
に回転しています。エンジンがやや温度を上げるまでその状態で回転をさせ、その後、70%ほどスロットル
を開けて1タンク目の慣らしをします。通常よりもニードルを閉めないと初期抵抗で回転が苦しいようです。
それでもエンジンストップ後、手でクランクしてみると初期のカタさは取れていました。
「地上での慣らしを重要視することはない」とOSさんの取説では書いてあるものの、ン十年来のラジコン経
験者には最低でももう1タンクやらなければ気が済みません。今度はシリンダ温度に気を付けながら100%
全開でニードルを開け閉めすることにより回転を上下させました。まだ飛んでいないのにすっかりカタさが取
れたFL−70は「早く飛びたい」と言っているかのようです。
再びエンジンを始動、地上回転で9400rpm の少し甘めのセットでいよいよフライトです。
少し小雨となった空を見上げながらタキシングさせますが、アイドリングにも不安はありません。徐々にスロ
ットルを上げていくと10mほどで力強く離陸して行きました。水平飛行でフルハイにしてもセッティングが
甘めなのでそれほど回転が上がっていませんが、スピードは十分に出ています。そのまま引き起こしても回転
は変化する様子もなくどんどん上空へ機体を引き上げていきます。やはり思った通りトルクフルです。
その後、何度かプロペラを換えながらニードルを絞っていった結果、全閉から1と1/8回転戻したところが
ピークとなっています。フライトを4タンク消化した時点ではすでにリングエンジンと同様の滑らかさになっ
ています。APC11×8を使用すればパターン演技をなんのストレスもなく行える実力を持っていることも
確認できましたが、11×9を試そうと思っていたところで残念ながら降雨終了となってしまいました。

FL−70の特筆すべき点はフラットなトルク特性だと思います。上昇途中でいったんスロットルを戻し機速
を落としたところからでも、そこからスロットルを開けていくと再び加速しながら上昇もできます。ネバリが
あると表現すれば良いのでしょうが、そんな味付けがされているようです。これはバルブリフト量をFS70
−Uより少なくし、キャブレター口径も小さめにすることによって初・中級者にも扱いやすい特性を狙ったも
のではないかと思いますが、ベテランのスタント練習にも十分応えてくれるだけのポテンシャルを持っている
ことが分かりました。また、燃費もすこぶる良好でサンデーフライヤーにはうれしい限りです。
自動車でもターボやスーパーチャージャーのような加給器付のエンジンよりもNA(自然吸気)エンジンの方
が感覚的に使い易いということと共通するのではないかと思います。
クラブ員にも何人かにスティックを渡して感想を求めましたが、「思ったよりもパワーがある!」「スロット
ルを開けたときの強迫観念が少ない」「音質がいい」と良い評価が得られました。
そんなに「トンがらず、神経質にならずに」のRCライフの原点を教わったような気がしました。


                                                                      廣瀬 清一

    −FL70 プロペラ マッチング−

  プロペラサイズ   回転数  静止推力
  
   APC 12   x 7       9600rpm     2.7 kg

     APC 12.5 x 6       9500rpm     2.75kg

     APC 11   x 8      10300rpm     2.4 kg