サイトー FA−82a インプレッション −こだわりのエンジンメーカー− 先ごろ発売になったサイトーエンジンの新製品「FA82a 」が私の手元に届きました。 RCエンジンメーカーである斉藤製作所は例えますとF−1界のフォードコスワースエンジン、実 機のライカミング社、汎用エンジンとして定評のあるロータックスエンジンなどと同様なシャーシ を作らないスペシャルエンジン専業メーカーとして私は捉えています。 その造りには特有のこだわりがあり、頑固なまでの職人気質を感じさせてくれます。 その斉藤製作所からFA−82a とネーミングされたエンジンが新たに発売されました。 外観上は手元にあるFA−72と同じでバックプレートも同じ樹脂製ですが、キャブレターのスロ ー調整ネジが廃止されてスリットのガイドストッパーに変更となっています。 キャブ本体では吸入口のメインボアが72の6.8mm から82a は7.6mm に拡大されており、排 気関係では排気バルブのエキゾースト出口が7.4mmから8.0mmに拡大され、吸排気効率のアップ を実現しております。 それに通常のボアアップ版ではなく、ストロークも長くなっているということは82のパワーに耐 えられるようにクランクシャフトも新設計されていることが見受けられます。 このモニターを始める前にお伝えしておきますが、私はサイトーエンジンの多気筒を除くこれまで のほとんどのエンジンを所有しております。持っていないエンジンでも飛ばした経験はありますの でサイトーエンジンには詳しいほうかと思います。 ところで、このところ本誌でエンジン記事を書かせてもらうことが多くなった私について「どんな 人なの?」という質問が多くなってきたので簡単にご説明をいたします。 ラジコン歴は中抜けの時期もありますが通算で30年以上、コンテストには出ないがほぼ毎週飛ば している普通のサンデーフライヤーであることを自認しております。長年やっていると自然にネッ トワークが広がり、いつの日か本誌編集長と知り合うことになった次第です。 本業は洋品屋でこの業界とは一切関係のない世界なのですが、若い時に二輪のレースをしていた時 期があって、少しばかりレース成績が良かったかったことから某メーカーのワークス供給を受けた ことがありました。ラジコンはというと元来エンジンがついた物が何でもスキで小学生の時、父の 友人で地域NO.1の模型店が近所にあり、そこのオヤジによく飛行場に連れて行ってもらってい たころが始まりです。初飛行は小学6年生の時で忘れもしない台風が近づいていた日です。アッと いう間に落としてしまい、すべてもらったものとはいえ、感動と落胆が一緒だったことを思い起こ します。その頃の機体は送信機はシングルボタン打ち、サーボはゴム動力のエスケープメントとい う装置だったので無理もありませんでした。昔のように落とすことが当たり前の時代からすると現 在は隔世の感がしないでもありません。 RCーFANでは普通のフライヤーの意見も重視していますので目線の高さが変わらない私などに も登場する機会が与えられているのではないかと思います。 少し長くなってしまいましたが、そんな訳でこの記事を書かせてもらっている次第です。 −ハイパワーにできる理由− サイトーエンジンの最大の特徴は殆どの製品がシリンダ内壁を高価なクロームメッキを施した仕様 になっている事とシリンダとヘッドが継ぎ目のない一体成形品で造られている点だと思います。 量産するのが難しいこのクロームメッキ処理は精度を出す加工に手間がかかる為、どうしても高価 になってしまいます。また、一体成形シリンダはヘッドとシリンダからの圧縮漏れは起こさないし、 ヘッドの冷却効果は熱伝導の点で優れている事となにより部品点数が少なくなることで軽量化に大 きく寄与しています。 また本題から外れて恐縮ですが、二輪時代にヤマハからシリンダ内壁をクロームメッキしたキット パーツが発売されたことがありました。それまでの鋳鉄スリーブと比べると、アルミ面に直かに爆 射をかけてメッキされたシリンダは放熱特性に優れていて鋳鉄スリーブよりもはるかに高度なチュ ーニングが可能となっていました。 空冷エンジンには最適なクロームメッキではあっても非常に高価な為、市販エンジンに採用される 事はあまり有りませんでしたが、その恩恵は当時大変なもので上位入賞するにはこのパーツが絶対 不可欠と言っても過言ではありませんでした。 私の所属はこのヤマハではなかったので開発担当者に「同じモノを作ってくれ」と再三、頼んだの ですがメーカーの意地からか受け入れてもらえませんでした。ノドから手が出るほど欲しかった物 が手に入らなかった悔しさは今でもはっきりと覚えています。 それでも諦められなかった私にヤマハの当時の監督から意外な話が届きました。 エンジン単体をプレゼントしてくれるというのです。しかもそのエンジンはワークス仕様の市販品 とはまったく別物でした。そして悪魔の囁きに負けた私はそのエンジンに積み替えて次の選手権に ぶっちぎりで勝ってしまったものですから所属メーカーはカンカンに怒り、「来年からのサポート をしない」と通告されるのに時間は必要としませんでした。 そんな時期にホンダでは初の2サイクルレーサーを開発していて、今度はホンダの開発に参加する するようになったのです。あのスティーブ・マックイーンが乗っていたTV−CMで有名なレーサ ーの開発に少し関わった時期もありましたがほどなく元にヨリを戻しております。 そんなエピソードを持つシリンダ内面クロームメッキに対する自身の思い入れは少し強すぎるかも しれませんが、使い方を誤らなければ一生モノといわれる耐久性、すばらしい冷却性、高度なチュ ーニングにもタレ知らず、そしてなによりも軽量であることが特徴です。 20年近く使い続けても性能を保っている私のFA−65は、クランクのベアリングを一度換えた だけでいまだに現役として活躍しています。 ハイカム仕様としたバルブ周りはサイトーエンジンのハイパワーの原動力です。バルブ面積を大き く取り給排気効率を極限まで高めたエンジンは、頑なにNA(自然給気)にこだわるサイトーの職 人気質であろうし、ハイパワーであっても誰にでも扱いやすいエンジンメーカーで在りたいと願う 自身がモデラーでもある斉藤 源社長の優しさのような気がします。 −機体選びにテーマを− 早速、機体選定に入りますが6月号で紹介したヨシオカモデルファクトリーの「イマジン 50」 に決定しました。このときは私は立ち会っていませんでしたが、純正のキットからメーカーが作り 上げた素晴らしい機体だったハズです。その機体にOS61エンジンを取り付け、尊敬する世界の 吉岡さんが自由自在に飛ばしていたと聞いて、腕は天地ほどの差があるものの重量・パワーが勝る とも劣らない(であろう)FA−82a をサンダータイガーでOEM生産されているARFキット のイマジン50に取り付け、吉岡さんになったつもりでやってみたくなったのです。 「あり余るパワーを水戸ナンバーのポルシェ(失礼)のように見せびらかすことなく、いかに優雅 に演出できるか?」がテーマですが「オレは吉岡だ!」と自己暗示をかけてやってみるつもりです。 でも、地面をこするような超低空・低速ナイフエッジはあと100年やってもムリなので、その時 だけ自己暗示を解き、なんの恥らいもなく普通のフライヤーに戻る予定です。 そうと決まったら大至急機体の製作を始めます。 イマジン50は前回レポートでお伝えしていますので詳しくは6月号をご覧いただきたいと思いま すがARFバージョンの完成度も素晴らしいものとなっています。キットと同様、レーザーカット の切り口が潔癖ともいえる精度を見せ、ヨシオカオリジナルの胴体モノコック構造は強度と軽量化 を見事に両立させています。また、フィルムのカバーリングもヨシオカモデルファクトリーのパン フレットと同様の複雑なカラーリングをそのままに再現しています。 今回のように急いで組み込んでも、狂いの全くない機体が出来上がるところから、サンダータイガ ー社への完成度レベルの要求は相当に高いことが伺われます。 注意する点としてラダーのワイヤーリンケージがあります。ロッド式に較べ左右方向に舵を打って もタワミが出ないので理想的ですが、ワイヤーの張りすぎは禁物です。左右を少しずつ張って行っ て舵面にアソビがなくなればそれ以上張る必要はありません。また、サーボ側は中心から一直線で はなく、中心より前にオフセットを取るほうが動作時のタワミが出にくくなります。 それとエレベーターロッドの機体出口は大きくし過ぎないようにして下さい。スムーズな動きを妨 げない程度とし、ガタやタワミが出ないようにしないとロッドがたわんでフラッターを起こす原因 になり兼ねません。 確実なセッティングが終わればフライト準備は完了です。 −フライトさせてみるー 取り扱い説明書にはプロペラサイズが以前よりも詳しく記載されていて、その種類はFA−91S とほぼ同じサイズです。比較すべきはFA−72ではなくFA−91Sではないかと思うようにな ってきました。その91Sのどこからでもパワーが盛り上がってくる素晴らしい性能、2400回 転程度でもいつまでも止まらないアイドリング、中速域多用でもパワフルなフライトが可能な特性 と比較してどうであるかやってみたくなりました。91Sは現在、手元にないのであくまでも記憶 とフィーリングによるものですが、以前13×8を地上で10000回転強で回していました。 地上で2タンクの慣らし運転を終えてまず始めは同じサイズのAPC13×8をセットしてテスト します。穏やかな回転で離陸して行ったイマジン50はまだ甘めのせいか少し多めの排気煙を出し て最初のターンをしますが、音の感覚よりも実際にはスピードが乗っています。エンジンに掛かる 負荷が少ないと分かったので60〜70%のスロットルでなんでも出来るか試しました。 そのまま垂直にどこまでも引っ張るし機速も一定です。回転一杯ではないので演技に優雅さがあり なんだかとてもウマくなった錯覚があります。 やっと分かりました。吉岡さんが61を積んでいた訳が・・・・。 余裕回転で飛んでいると、見ている人に圧迫感がなくなり機体が優雅に見えるのです。機体だけで すヨ、機体だけ。でも私がやると舵の荒さがかえって目立ってしまいます。打ち過ぎず、必要最小 の舵が打てればいいんですが、やっぱり100年以上早かった。奥は見えないほど深い。 こうなると、どのぺラがピークでどうしたこうしたは余り意味を持ちません。この機体とエンジン とペラの組み合わせが一発で気に入ってしまいました。 そしてもう少しニードルを絞った時のフルハイは田舎モノの首都高のように節操なくカッ飛んで行 くだけのパワーも持っていました。それにしてもピークでのパワーはまるで91Sですが中速トル クはやはり91Sに一日の長があるような気がします。でも地上でこの13×8を10600回転 で回していましたので、ピークではたぶん91Sを上回っているのではないかと思います。 結びとして感じたものは「90クラス以上のパワーを発揮するのにエンジン重量は50クラス」、 がこのサイトーFA−82a の率直な評価です。 現在ブームのファンフライ機や63クラススタント機との換装などが考えられます。 スポーツフライト時には是非、中速域の素晴らしい実機のような音を堪能してみてください。 あなたをきっと満足させてくれるハズですから。 廣瀬 清一 |