(8)EP−8v2SP インプレッション
<EP−8v2SPとは?>
国内はもとよりアメリカ・ヨーロッパで話題になっている電動ヘリコプター「QEP−8 v2 SP」を
フライトさせてみた。このヘリは旧モデルのEP−8を大幅に強化して登場したモデルである。
そもそも旧モデルのEP−8も4セル14.8V環境で飛行させるには何の問題も発生しなかったが、アメ
リカでは5セルや6セルを積んで飛ばすのが流行となり、設計強度を超えた使い方がともすると剛性不足や
ねじれが発生したための強化バージョンである。
この新モデルには随所に高価な超々ジュラルミンを使用し、旧モデルに対し50%以上の強度を与えている
そうである。
言い換えれば「旧EP−8」のフルオプション仕様ともいえ、後で交換すべきパーツは何もない。
それにしても5セル、6セルで飛ばせば止まっているところから瞬間移動が出来るぐらいのパワーを身に付
けることができる。3Dが当たり前となった昨今はちょっと前では考えられない飛行スタイルをユーザーが
考え出し、エンジンヘリにも出来ないような運動性が要求されるようになって来た。このような理由から特
に強化した所はテールドライブユニットで、先述の超々ジュラルミン素材の多用、ベアリングの大型化、す
べてのパーツを金属化した点である。これはメインローター回転の高回転傾向に対応したもので、ドライブ
するタイミングベルトも他社ではほとんどがオプション設定のスーパートルクタイミングベルトを使用し、
強度、耐久度も向上させている。
メインドライブギヤは0.8モジュールの120枚、これも高価な削り出しパーツで、他社で標準設定にし
ているところはほとんどない。歯形形状はインボリュートという曲面加工をしており、ギヤノイズ、フリク
ションロスが極めて少ない高効率なギヤをこの価格で贅沢に使用している。これをドライブするモーターピ
ニオンは実に57種類、8枚から25枚の19種をモーター軸3.18mm、4.0mm、5.0mmの3
種で揃えてあるのである。およそ使えそうなモーターはすべて対応できるようにしているとのことである。
実際、この「QEP−8 v2 SP」のサイズはエンジンヘリでいうところの15クラス、パワーソース
はエンジンヘリで言う30クラスであろう。それがバッテリーのセル数を追加することで簡単に50クラス
以上のパワーが手に入ってしまうのだから、海の向こうでの想像以上のハイパワー化はメーカーの想定外の
ことといってもムリもない。
<動力ユニットと搭載メカは?>
テスト機にはメーカーが推奨するパワーユニットである<ハッカーA30−10L>が搭載されており、こ
れをリチウムポリマー4セル14.8V3000mAhで飛行させるが、これとて簡単に普通の3Dはこな
せる仕様である。このハッカーのモーターが秀逸で機体ボリューム、メインローターからすると25アンペ
アぐらいは流れると思ったが、実際の飛行では15〜18アンペア程度しか掛からなく、バッテリーも20
00mAhで充分飛行できるそうである。ということは計算上では飛ばし方にもよるが、飛行時間はらくら
く20分以上飛ばせることになる。
また、このクラスともなるとサーボには2.5kg/cm以上のトルクを有するサーボが必要となるので、
動力用バッテリーから供給されるBECではアンペア数が足りなくなることが明らかである。
したがって必ず受信機・サーボ・ジャイロ用に別電源を用意するようにしたい。サーボも予算が許すならば
出来るだけ高トルクを有するものにしたい。テスト機にはすべてフタバ製のデジタルサーボ S3150
(3.7kg/cm)が取り付けてあったが、テスト時はラダーサーボのみ、もう少し動作の速い S31
01(2.5kg/cm)に換装した。
ジャイロは同じフタバ製のGY240が取り付けてあった。こちらには何の問題もないであろう。
送信機はフタバFF−9を使用し受信機もPCMのR−137HPを使用、アンプはキャッスルクリエーシ
ョンズのフェニックス35Aブラシレス用である。
メインローターはキットに付属の木製ローター400mmであるが、メーカー側の説明ではこれで充分3D
飛行が出来るという。
<テストフライト>
バッテリーをあらかじめ家で充電してクラブの飛行場へ向かう。例年、桜の時期にはで強風が吹く日が多く
心配していたが、テストフライトには比較的おあつらえ向きな穏やかな日、とはいっても4〜5mの風はあ
るが大風が吹く前に早々テストに入る。
まだ発売されていないQEP−8 v2 SPにクラブ員の注目が集まる中、あらかじめ入力しておいた机
上セッティングでホバリングから始めた。ピッチを合わせ、ジャイロのセッティングを済ませて軽く上空へ
持って行く。飛行重量1.44kgの機体は軽々と上空を走り回り、素直な特性でなんのクセも出ない。
それにしてもハッカーモーターはパワフル、スティックに楽々付いて来るのである。電流値など測定する必
要がないほど負荷が少ないことがよくわかった。
電動なのだから静かなことは当たり前だが、ギヤノイズが少ないことに改めて感心した。
ここでハイピッチが多過ぎることに気付いたので一旦降ろしてピッチカーブの再調整、ハイ側、ロー側とも
11度にしてから再度飛行に移り、アイドルアップに入れる。
サイドフリップ、バックフリップ、ピルエットフリップと入れてみるが、いとも簡単にこなしてしまう。
背面ではスティックから手放しが出来るぐらいの安定性も獲得している。
設計者の意図では正面・背面・前進・バックでもニュートラルな性能を持たせることと聞いていたが、なる
ほど確かにどんな姿勢でも言う通りであったことを付け加えておく。
ただし、初心者の方には組み立てから難しいであろう。何しろすべてがバラバラの状態で組み立てなくては
ならないので、経験者が付いてくれる場合はその限りではないが、ある程度の組み立て経験がないと理想的
なセッティングまでこぎ着けることが出来ない。
飛行そのものはむしろ易しいほうかも知れないが、今回のQEP−8 v2 SPのように電動モデルのセ
ッティング幅が大きい機種ほど押さえなくてはならない項目が沢山あるからだ。
たとえば許容電流値の確認。机上では計算が合っていても実際の飛行状態でその範囲内にあるかどうかは、
組み方によっても個々に変動があるからだ。ピッチやピニオンの選択一つでも簡単に変化するのである。
しかし、電動モデルの基礎知識が解っていれば理想的なセッティングにまで持っていくことはさほど難しく
はないので、どしどしチャレンジしてみてはどうだろうか?解かる人にはとても良いヘリなのだから。
廣瀬 清一
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