(5)エンジンのトラブルシューティング
アナタのエンジンは快調に廻っていますか?
いろいろな条件下で使用されているエンジンはいつも快調であればいいのですが、その
使われ方や使用時間などで少しずつ変化するようになってきます。
また、誤った使用方法や各種セッティングミスによって引き起こされる様々なトラブル
について、あらかじめ知っているのと知らないのではエンジンのライフにも大きく関わ
ってきますので、是非この機会にトラブルシューティングについて理解しておいていた
だきたいと思います。
1、飛行前のトラブル
A、エンジンが始動しない
@燃料がキャブまで来ていない
<症状と対処方法>
いくらクランクをしても燃料が到達しない。ニードルが最適な状態で燃料が
引ききれないときは2サイクルの場合、一旦プラグヒートを外し、キャブの
ドラムを全開にして吸入口を指でふさぎながら正回転方向にゆっくりクラン
クしてみてください。もしくは2サイクル4サイクルともに排気口を指でふ
さいでしても同じ効果となります。
A燃料が入り過ぎて始動しない
<症状と対処方法>
いわゆるオーバーチョークです。この状態のときスターターで廻した場合、
ウオーターハンマーを起こしてしまいます。過度な燃料がシリンダヘッドま
で上がってしまうと、液体は圧縮できませんからピストンを割るか、コンロ
ッドを変形させてしまうのです。手で久ランクしてみて廻らないときは、プ
ラグを外して勢いよくクランクするか、スターターで廻して内部の燃料を排
出させてください。
B点火しない
<症状と対処方法>
プラグの劣化か電圧不足。プラグを外してヒート出来てもフィラメントがゆ
がんでいたり白化しているとエンジンの不調となって現れる。切れている場
合も含めて交換すること。また、ヒート電源の電圧が低下している場合も掛
からないことがあります。プラグを外してヒート出来ても、圧縮が掛かると
ほとんど消えてしまうためです。親電源を充電又は交換してください。
2、飛行中のトラブル
A、離陸後、すぐにエンストした
@ほとんどの場合ニードルの絞りすぎ
<症状と対処方法>
タンクとキャブの位置が地上ではほぼ水平位置でしたが、離陸後の上昇姿勢
によって液面差により混合気が薄くなった状態です。出来るだけ止まらない
ようにするにはスロットルを少し戻すことで対処するしかありません。その
ままスロットルを全開にしていた場合は、ほぼ100%エンストします。何
とか止まらないようにして、早期に着陸させてニードルを濃い目に調整し直
してください。
A回転が上がらない
<症状と対処方法>
前項と同じ場合もありますが、プロペラのダイヤ(直径)とピッチがそのエ
ンジンに合っていないことが多くあります。ダイヤ、ピッチともに小さ目な
ときは余り問題ありませんが、過大な場合はニードルのピークが分かりにく
くなります。エンジンにも負担が掛かるし、4ストの場合はノッキングを起
こし易くなります。取扱説明書にある範囲で選択してください。
B息つきを起こす
<症状と対処方法>
振動によりタンク内部で泡が発生している。配管途中でピンホールが出来て
いてキャブまでの感に空気が混入している。振動でなる場合はタンクをスポ
ンジ等でくるんだりして防振対策をする。シリコンチューブにピンホールが
出来ている場合は交換以外方法はありません。
3、オーバーヒートを起こしている
A、空燃比が薄くて起こる場合
@地上セッティングでニードルの絞りすぎ
<症状と対処方法>
最適なニードルを決めたつもりでもタンク内燃料が少なくなるのと薄くなる
ことが比例していることを見逃している。これは満タン時は一番に濃い状態、
ここで絞って最高回転が出ているとすると、徐々に燃料を消費するに連れ薄
くなることは当然。それと同時に少なくなればなるほどオーバーヒートの兆
候が現れ、ガス欠寸前にオーバーヒートを起こしてしまう。
ピークを確認したら必ず数コマ戻すことを忘れない。そして、飛行前には機
体を立ててみてスロー〜ハイが付いてくるようであればOK。
息つくようであれば、更にそこから数コマ戻すこと。
Aニードル・スプレーバー部の詰まり
<症状と対処方法>
燃料中のゴミや微細クズが集り一番流路の狭い部分に詰まってしまっている。
そのため、ニードルを絞ったのと同じ状態になりオーバーヒートを起こして
いる。ニードルを分解し、エアーガンなどで詰まっているものを吹き飛ばす。
再度ゴミが流入しないように燃料フィルターを点検し、問題があれば交換し
ておく。燃料補給時は必ず燃料フィルターの手前から給油すること。
燃料フィルターが途中に入ったまま入れている人を案外多く見かけます。
B、冷却不足によるもの
@カウルなどの切欠きが少なく充分に空気が当たらない為に熱が逃げ切らない
<症状と対処方法>
カウルの切欠きは入り口よりも出口の面積を増やすこと。出口を全く設けな
いで、入り口ばかりを大きくしている人がたくさんおります。カウル内の空
気排出効率は出口の大きさと形状で決まりますので、NASAダクトなどを
参考に積極的な排出を心掛けてください。
Aプッシャー機のように直接プロペラ後流が当たらないとき
<症状と対処方法>
飛行中の風量では充分に冷却出来ないエンジンもあります。このような場合
も出来るだけ甘めのニードルセッティングで対処します。内燃機関は混合気
による冷却は直接風よりも重要です。パワーが足りなくなったときはニトロ
の含有量をワンランク高いものに替えることによりパワーを確保できます。
C、燃料配管のトラブルによるもの
@シリコンチューブのつぶれ
<症状と対処方法>
せまい部分を配管しますので数本が互いに干渉して折れ曲がっている場合は
なるべく短い距離でシンプルに配管をすることで折れ曲がりを防ぎます。
A配管途中にピンホールがある
<症状と対処方法>
目に見えない位いのピンホールでも確実にエアーを吸います。燃料ポンプ等
で圧を掛けると吹き出しますのですぐ分かります。即交換です。
Bタンク内の問題
<症状と対処方法>
これまでのところに問題がない場合はほとんどの場合タンクです。内部燃料
パイプがキンク(折れ曲がり)している。吸い口オモリが脱落している。
内部チューブが劣化して穴が開いているなどですが、一度タンクを下ろして
調べてみなければ分かりません。
4、異音がしてエンストしてしまった
A、焼き付き、及び内部破損
@ピストンの焼き付き
<症状と対処方法>
内部の潤滑不足で起ります。慣らし運転が不充分なのに廻しすぎた。ニード
ルを絞りすぎた。燃料が古すぎたなどの理由で起きます。
焼き付き以前の軽い引っ付きぐらいでしたらピストンとリングを交換すれば
直りますが、シリンダ内部にキズが付いているような場合はスリーブも交換
しなければなりません。特に大事なものはピストンリングで、指で廻して見
て膠着していないかどうか調べてください。(リング付きエンジンの場合)
Aピストンの割れ、コンロッドの折れ
<症状と対処方法>
上記の場合に加え、コンロッドやクランクケースまで破損している場合もあ
ります。ここまで破損するとクランクシャフト前後のベアリング内部にカケ
ラを噛んでしまっていますので交換することとなります。
B、エンジン取り付けによるもの
@マウント部や防火壁取り付けの緩み
<症状と対処方法>
特に防火壁取り付けボルトは緩み易いところです。組み上げた当初はしっかり
止めたつもりでも、振動等で木部が痩せてくるとビスは一気に緩みます。
なかなか手が入りませんが、定期的に点検したいところです。
Aプロペラ締め付けボルトの緩み
<症状と対処方法>
ほとんどの場合ナットが緩むと一瞬にしてエンジンは止まります。フライホイ
ール効果がなくなるからで、スピンナーが付いている場合はそのまま落下して
来ます。飛んでいるときならまだしも、エンジン始動時に起こすと洒落になり
ませんし危険ですから、定期的に増し締めを行なえば大丈夫です。
C、4サイクル特有の異音
@アイドリングでカチャカチャ音が大きい
<症状と対処方法>
タペットのクリアランスが大きくなるとこの音がするようになります。指定さ
れたクリアランスになるよう冷間時にタペット調整を行って下さい。また、稀
にロッカーアームに問題がある場合も有りますので調べてみます。
Aノッキング
<症状と対処方法>
4サイクルにおいて大敵はノッキングです。多くの場合はニードル絞りすぎに
より起こします。飛行中のフルスロットル時にキンキン、カリカリという音が
聞こえた場合は、直ちに着陸させてニードルを濃い目にしてください。そのま
ま飛ばし続けるとエンジン破損につながります。
5、飛行後のトラブル
A、エンジンの大敵、サビを発生させない
@サビを発生させる原因
<症状と対処方法>
飛行後には燃料を完全に抜いておくことです。燃料の主成分、アルコールは水
との親水性が非常に高く、習慣的に燃料を抜かないでいると金属部がサビてし
まうことになります。フライト後もエンジン内部に燃料が残らないように燃焼
させておき、メンテナンスオイルを注入してから保管するようにしましょう。
A機体の保管方法で起こる問題
<症状と対処方法>
車庫や物置に保管した場合は機体、エンジン、メカともに劣化することが多く
なります。気温差が大きかったり湿度が高い場合は特にその傾向が強くなりま
すので、できるだけ人間に近いところへ置くようにしたいものです。
Bエンジンを下にして立てて保管した
<症状と対処方法>
エンジン内部の残存オイルは燃焼後には硝酸成分が多く、それ自体が酸化して
いますのでサビの原因になります。エンジンを下にして保管した場合は一番錆
び易いクランクシャフトベアリングをオイルに漬けた状態になります。これは
なるべく避けるようにしてください。また、タンク内部の吸い口オモリが内部
配管に絡まってしまってチューブをキンクさせる原因になりますが、こうなっ
てしまうとなかなか気が付きませんのでご注意ください。
以上、代表的な原因を挙げてみましたがご参考になりましたでしょうか? エンジンは大事
に扱ってあげればオーナーの愛情に応えてくれます。生かすも殺すもオーナーの扱い方次第
ですので、ここに説明したことを参考にもう一度大事に扱ってあげてください。
そら工房ドットコム 廣瀬 清一
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